お墓のお役立ちコラム

墓じまいでお墓継承問題は解決できる?よくある問題や手順を解説

そもそもお墓の継承とは

 

お墓継承問題に対応するには、墓じまいを検討するのも1つの方法です。まずは、そもそもお墓の継承とは何か、またお墓継承による相続財産への影響について説明します。

 

祭祀承継者になること

お墓の継承とは、祭祀財産(さいしざいさん)を継承する祭祀承継者になることです。祭祀財産とは、お墓や仏壇・家系図といった祖先や故人を祀るために必要な財産のこと。祭祀承継者が亡くなった場合など、次の祭祀承継者になることが「お墓を継承」することになります。

 

祭祀財産はすべて1人が継承すると民法で定められています。

 

参考:厚生労働省「墓地経営・管理の指針等について」

 

相続財産には影響しない

お墓継承はプラス面でもマイナス面でも相続財産に影響せず、相続問題にはなりません。

 

お墓や仏壇といった祭祀財産は相続財産に含まれません。お墓を継承しても遺留分の問題にはならず、財産分与が減らされるわけではありません。逆にお墓を継承して負担が問題になっても、財産分与は多くなりません。

 

お墓継承は相続財産ではないので相続税はかかりませんが、相続放棄にも対応しないので、お墓継承は放棄できないのがポイントです。

 

よくあるお墓継承問題

お墓継承が何か分かったところで、どのような問題が起こりやすいのかをみていきましょう。ここでは、よくあるお墓継承問題について紹介します。

 

お墓継承問題①継承者が決まらない

お墓継承問題でもっとも多いのが、継承者が決まらないことです。お墓を継承したい人が複数いて問題になることもありますが、逆に遺族の中にお墓を継承したい人がいなくて問題になる場合も多いのです。

 

お墓の継承が問題となる主な要因に、お墓が遠方にあって管理負担が問題となることが挙げられます。このような問題に対応するには、墓じまいも選択肢の1つでしょう(墓じまいについては後述します)。

 

お墓継承問題②遺産分割に影響する

次によくある問題は、遺産分割の際にお墓の継承者としての負担を加味するように求められることがあります。

 

お墓や仏壇など祭祀財産は相続税の課税対象にはならないので、本来、遺産分割を行う上で相続に影響せず、問題にはなりません。ですがお墓を継承すると、お墓の管理費やお墓への交通費、また墓地管理者との連絡といった負担が発生します。この負担をお墓の継承者が問題視して遺産分割の際に多めに現金をもらいたいと考える場合もあり得ます。

 

お墓の継承者が責務の負担を加味した遺産分割を要求することで、お墓の相続だけの問題ではなく遺産分割問題にまで発展する場合もあります。

 

お墓継承問題③霊園が血縁者以外の継承を認めない

民法には、お墓の継承者は血縁者でなければならないなどの制限は設けられていません。法的には、どのような立場の人がお墓の継承者になっても問題はないのですが、墓地を管理するところによっては血縁者以外はお墓を継承できないと規定している場合もあります。さらにはお墓の継承者を直系長男に限定している場合も問題になりえます。

 

お墓を継承する時になって初めて霊園や寺院の規約を知り、継承者がいないと問題になることもあるので事前に確認しておくことが大切です。

 

お墓の継承者の選び方

 

前述のように、お墓の継承者(祭祀承継者)は1人と民法で定められています。法律的には誰が継承しても問題ありませんが、親族間で問題とならないよう、皆が納得できる継承者を選びましょう。

 

お墓継承者の選び方①故人からの指名

お墓の継承者として、もっとも優先順位が高いのは故人(それまでの祭祀承継者)から指名を受けた人です。

 

お墓継承者の指名は、遺言書などの正式な書面で示す必要はなく、エンディングノートなどの記載でも問題はありません。また口頭の指名でも、同席し証明できる人がいれば問題なく成立します。

 

故人による継承者指名は絶対で、指名されたらお墓の継承は避けられません。ただし、お墓継承した後、墓じまいしても法理的に問題ありません。

 

お墓継承者の選び方②慣習に従う

故人からの指名がない場合、慣習に従うと問題が起こりにくいでしょう。慣習は地域や家によっても異なりますが、以下の順番でお墓を継承するのが一般的です。 

 

  1. 故人の長男(嫡男)
  2. 故人の配偶者
  3. 故人の両親
  4. 故人の兄弟姉妹
  5. その他の親族

 

従来、長男(嫡男)が先祖代々のお墓を継承し、次男以降は結婚して家族ができると新しくお墓を建てていました。ただしお墓の継承者が認めれば、独身の兄弟姉妹など墓に入って問題はありません。

 

お墓継承者の選び方③家庭裁判所の調停裁判

家族や親族間でお墓継承問題を解決できず、お墓の継承者が決まらなければ、遺族による「祭祀継承者を定める審判申し立て」をし、家庭裁判所が継承者を選ぶことで問題に対応します。

 

家庭裁判所が問題に対応するため、お墓の継承者を決める時も一定の基準があります。家庭裁判所の判断基準は以下の通りです。

 

・故人(それまでの祭祀承継者)との関係性

・お墓の継承者(祭祀承継者)としての意思や能力に問題はないか

・生前に故人と交流があったか

・お墓からの距離に問題はないか

・お墓や仏壇を継承する前の管理状況に問題はないか など

 

とはいえ、お墓継承問題は継承者が決まれば良いというものではありません。今後の付き合いを考慮し、お墓継承問題を家庭裁判所まで持ち込まずに相続人の間で問題を解決するのが理想的です。

 

お墓の継承者になる手順

墓じまいするには、お墓の名義変更をして継承者になる手続きが必要です。続いて、お墓の継承者になる手順を紹介します。問題なくお墓を継承できるよう、事前に確認しておきましょう。

 

手順①寺院や霊園の管理者へ連絡

お墓の名義人(祭祀承継者)が亡くなったなど問題が発生したら、墓じまいする前に寺院や霊園など墓地の管理者に連絡して名義変更手続きを行います。霊園には公営と民営がありますが、公営の場合は霊園がある自治体の市町村役場、民営の場合は管理事務所に連絡しましょう。

 

公営霊園は市町村役場で手続きをしますが、お墓継承者への名義変更手続きは行政手続きではないので、死亡届の提出や埋葬許可証の申請とは別に行います。

 

同様にお墓の名義人の死亡届を提出しても、お墓継承者への名義変更手続きを自動的にしてくれるわけではありません。墓じまいすることなく、お墓継承者への名義変更がされないままで一定期間が過ぎると、墓地使用権を失って無縁墓となってしまうなど問題が発生します。

 

スムーズに墓じまいするためにも、忘れずに名義変更の手続きを行ってください。

 

手順②必要書類を準備

お墓継承に必要な書類は、お墓の管理者にもよりますが代表的なものは以下の通りです。

 

  1. 名義変更届

 

お墓の継承者の住所・氏名・電話番号、お墓の名義人との関係(続柄)を記載し、名義変更の旨を届け出る書類です。後に墓じまいをする場合でも、名義変更は必要です。

 

書類の名称は「墓所承継使用申請書」や「変更届出書」など。書類の名称や様式は、墓地の管理者によって異なりますので、問題がないように事前に請求しておきましょう。

 

  1. 墓地使用許可証(永代使用許可証)

 

墓地を最初に取得した時(永代使用権を取得した時)に発行される書類です。お墓の継承者に名義を変更する際、必ず提出します。

 

墓地使用許可証を紛失している場合でも問題なく再発行できますが、数百円から1万円程度の再発行手数料がかかりますので注意しましょう。

 

  1. 戸籍謄本

 

旧名義人(故人)の死亡記載がある戸籍、旧名義人と新名義人(お墓継承者)との関係が分かる戸籍謄本です。特に問題はなくても、お墓の継承者と旧名義人との関係などによっては旧名義人の相続関係すべてを証明する戸籍が必要になる場合もあります。

 

多くの場合、戸籍謄本は発行から3ヵ月以内(または6ヵ月以内)のものと期限が定められていますので、提出時に問題にならないように確認しておきましょう。

 

  1. 新名義人(お墓継承者)の印鑑証明書

 

名義変更届などの書類には、お墓継承者の印鑑登録した実印を押印します。さらにお墓継承者本人からの申請であることを証明するため、印鑑証明書を添付します。ほとんどの場合、印鑑証明書は発行から3ヵ月以内のものと定められています。期限が問題にならないように注意しましょう。

 

上記の他にも、遺言書、親族の同意書、家庭裁判所の審判書が必要な場合もあります。後から問題にならないように、どのような書類が必要かを墓地の管理者に確認してください。

 

以下に、お墓継承に必要な書類の例をまとめます。

 

・墓地使用許可証、または永代使用承諾証など(墓地使用権を取得時に発行されたもの)

・お墓の名義人の死亡が確認できる戸籍謄本など(お墓継承の理由を示す書類)

・お墓継承者の戸籍謄本や住民票

・お墓継承者の実印と印鑑登録証明書

 

必要に応じて

・お墓継承者の誓約書(墓地管理者の所定書式のもの)

・葬儀の領収書や会葬御礼など(喪主など祭祀主宰していることが確認できる書類)

・お墓継承者を指定した遺言書

・お墓継承者が親族以外の場合はその理由が分かる書類、親族の同意書

 

手順③寺院や霊園の管理者へ必要書類を提出

必要な種類が揃ったら、手数料とあわせて寺院や霊園などお墓の管理者に提出します。手数料はお墓の管理者により異なりますが、以下が目安です。

 

・公営墓地:数百円~数千円程度

・民営霊園:数千円~数万円程度

・寺院墓地:無料~数万円程度

 

寺院墓地の場合、変更手数料に加えてお布施が必要な場合もあります。お布施は数千円から数万円程度が相場ですが、寺院との付き合いにもよりますので、直接確認する方が問題ないでしょう。

 

さらに寺院墓地では、お墓の名義だけでなく檀家の立場も引き継ぐ場合が大半です。お墓継承後は定期的な行事への参加やお布施を求められることもあります。墓じまいを行う際に問題とならないよう、確認しておきましょう。

 

手順④新しい継承者名義の「墓地使用許可証」の発行

必要な書類を提出し、名義変更手続きが終わったら、お墓の管理者から新しい継承者名義の「墓地使用許可証」を発行してもらいます。

 

墓地使用許可証は墓じまいの際にも必要です。問題なく墓じまいを行うためにも、大切に保管してください。

 

墓じまいとは

ここからは墓じまいについてみていきましょう。まずは墓じまいとは何か、問題なく墓じまいを行うために気を付けたいポイントを説明します。

 

お墓を解体・撤去し、使用権を返還すること

墓じまいとは、今あるお墓の墓石を解体・撤去し、墓所を更地にして、寺院や霊園などのお墓の管理者に使用権を返還することです。

近年、お墓継承問題に対応するために、従来のお墓を墓じまいする人が増えています。

お墓を継承しても、勝手に墓じまいはできません。お墓に納められている遺骨を勝手に取り出して別の場所に収めたり、破棄したりすることは法律で禁止されています。問題なく墓じまいを行うには、行政手続きが必要です。

 

墓じまいで起こりやすい問題

墓じまいを行うことで継承者がいないといった問題に対応できますが、一方で墓じまいによる別の問題が起こる可能性もあります。墓じまいで起こるかもしれない問題をみていきましょう。

 

墓じまいで起こりやすい一番の問題は親族間でのトラブルです。お墓は先祖代々、継承されてきたもの。親族にとっても大切な人が供養されている場所です。お墓継承者の一存で墓じまいをしてしまうと、親族からお墓がなくなったことへの不満が出て問題になるかもしれません。

 

墓じまいで次に多いのは、金銭的な問題です。墓じまいの相場は改葬先など条件により差がありますが、30万〜300万円程度かかります。また墓じまいする前のお墓があった寺院の檀家だった場合、墓じまいして檀家を辞める際に離壇料が問題になることも。

 

墓じまいをして永代供養墓に合祀した場合、他の方の遺骨と一緒に納骨されます。一度、墓じまいしてしまうと、遺骨を取り出すことはできません。墓じまいをしたからといって、必ずしも永代供養を選択しなくても問題はありません。元のお墓が遠方なので問題だが、供養は自分達でしたい場合、元のお墓を墓じまいして近くに改葬先を見つける方が良いかもしれません。

 

墓じまいして永代供養墓に改葬しても、一定期間は個別に供養されるところもあります。後から問題にならないよう、墓じまい後の改葬先がどのように対応しているのかを確認しておきましょう。

 

墓じまいをしないことで起こるかもしれない問題については、以下の記事を参考にしてください。

 

「墓じまい」しないとどうなるの?

 

墓じまいの手順

 

続いては墓じまいを行う手順を簡単に説明します。また問題なく墓じまいの手続きができるよう、必要な書類も確認してみてください。

 

  1. 親族間で墓じまいについて話し合う
  2. 新しい供養方法や納骨先を決める
  3. 寺院や霊園など現在の墓地管理者に相談する
  4. 自治体から許可書を発行してもらう(・改葬許可申請書・改葬許可証・受入証明書)
  5. 墓石の解体・撤去作業を依頼する業者を選ぶ
  6. 閉眼供養(魂抜き)の法要を行う
  7. 遺骨を取り出し、墓石を解体・撤去する
  8. 受け入れ先へ納骨する

墓じまいについての詳細はこちらの記事をチェックしてください。

→ 【保存版】墓じまいマニュアルー墓じまいをするならこれで完璧ー

墓じまいにまつわる疑問

最後に墓じまいに関してよくある疑問を紹介します。お墓継承問題から墓じまいを検討する

際に参考にしてみてください。

 

墓じまいする人は増えているの?

近年、全国的に墓じまいする人が増えています。墓じまいが増えている背景には核家族化や少子化によりお墓継承者がいない、継承者がいても遠方で管理が難しいなどの問題があります。また、SDGsなどの観点から自然回帰を望み、従来の墓を墓じまいして樹木葬など自然葬を選ぶ人も増えています。

 

墓じまい後は長男でもお墓を継承しなくて良い?

墓じまいとはお墓を撤去し、墓所を墓地の管理者に返却することです。墓じまいすれば継承すべきお墓はなくなるので、長男といえども継承する必要はありません。

 

墓じまいと永代供養と何が違うの?

墓じまいとは、文字通りお墓をしまう(片付けること)です。永代供養とは、遺族の代わりに寺院や霊園の管理者が永代的に遺骨の管理や供養をしてくれること。近年では従来のお墓を墓じまいし、永代供養墓に改葬するケースも増えています。

 

墓じまい後の遺骨の供養は?

墓じまい後、新たにお墓を建てる以外にも供養の方法はあります。墓じまい後の供養として代表的なものに永代供養墓、納骨堂や共同墓地、自宅での手元供養、樹木葬などの自然葬があります。

 

墓じまい後、お墓を必要としない供養方法については以下の記事もご覧ください。

お墓はいらない?お墓不要の供養の仕方と墓じまいを徹底解説

 

まとめ:お墓継承問題に対応するため墓じまいを検討しよう

 

地元を離れたり、後継ぎがいなかったりとさまざまな問題から先祖代々のお墓を受け継ぐことが難しい方もいるでしょう。お墓継承問題が解決しないままでお墓を放置し、墓地使用権を失って無縁墓になるなど問題も起こっています。お墓継承が難しい場合は、墓じまいを検討してみてはいかがでしょうか。


墓じまいには必要な手続きや費用が発生し、1人でやるには無理だと感じる方もいらっしゃるかもしれません。お墓継承問題に対応するために墓じまいをお考えなら「みんなの永代供養」までご相談ください。経験豊富なスタッフが墓じまいに関するさまざまな疑問にお答えします。

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