お墓を建ててはいけない年はあるの?お墓の生前購入を解説します
近年、最後まで自分らしい生き方をしたい、自分亡き後の家族の負担を減らしたいと終活を行う人が増えています。
それにともない、生前に自分のお墓を建てたいと考える人も増加しています。
しかし、生前にお墓を建てるのは縁起が悪いのではないか、厄年の年やうるう年の年などお墓を建ててはいけない年があるのではないか?いつ建てたらいいのか?お墓を建てる手順は?メリットデメリットは?などの疑問があるようです。
今回はその疑問をすっきりと解決できるよう、お墓の生前購入について解説します。
目次
お墓の生前購入とは?
お墓の生前購入とは、自分が生きているうちに、お墓を建てておくことです。
生きているうちにお墓を建ててもいいのか?生前にお墓を建てるのは縁起がよくないのでは?と思うかたもいらっしゃいますが、お墓を生前に建てても問題ありません。
また、生前にお墓を建てておくことは、実は縁起がよいものと言われています。
なぜお墓を生前に建てておくことは縁起がいいのか?
生前に建てたお墓のことを「生前墓」や「寿陵(じゅりょう)」といいます。
寿陵は中国から伝わったもので、「長寿」「子孫繁栄」「家内円満」を招くとされ、生前にお墓を建てておくことは縁起がいいものと考えられてきました。
仏教の教えにおいても、寿陵を建てることは長寿を願う意味合いがあります。
また、生前にご自身の戒名を受け、ご自身の供養を行うことを「逆修」といいます。
逆修は、生前に死後を考えて功徳を積んでおくことになり、その功徳は子から孫へと残すことができるため、生前にお墓を建てておくことは、子孫の繁栄と幸福につながると言われています。
お墓を建ててはいけない年はあるのか?
生前にお墓を建てておきたいけれど、「お墓を建ててはいけない年がある。」「特に厄年や閏年(うるう年)の年にお墓を建ててしまうのはよくない。」と聞いたことがあるという方もいらっしゃると思います。
しかし、科学的根拠はなく、江戸時代の教えが現代に残っているだけで、厄年やうるう年の年だからといって、お墓を建ててはいけない年ではないのです。それぞれ説明していきます。
①厄年はお墓を建ててはいけない年?
厄年の概念は平安時代からのもので、仏教や神道といった宗教とは関係ありません。厄年は中国から伝わった陰陽道が起源と言われています。
厄年について詳しく調べてみても、厄年の年に特にやってはいけないことはないようです。厄年の年は社会的にも心身的にも転期を迎える年であり、この年には新しい挑戦や大きな決断が多くなります。
そのため、家やお墓を建てるなど、大きなイベントは慎重にするよう心がけたほうがよい年であると言われ、厄年にお墓を建ててはいけない年という言い伝えができあがったようです。
また、厄年には小厄年・中厄年・大厄年とあり、家族・親族の分を考えると、ほとんどの年で誰かが厄年なのではないでしょうか。厄年の年にお墓を建てておくことを控えていると、いつまでもお墓を建てることができないまま年月が過ぎてしまいます。
終活で自分のお墓を建てて、最後まで自分らしくいたい気持ちと、厄年が心配でお墓を建てることに不安を感じてしまう気持ちとで迷う場合があると思います。そんな時には、厄年について正しく理解し、厄年のお参りをしておくことで、気持ちがすっきりしてお墓を建てる決断ができるようになるかもしれません。
②閏年(うるう年)の年はお墓を建ててはいけない年?
閏年(うるう年)とは、4年に一度やってくる、一年間が366日ある年のことです。
うるう年は暦と季節を調整するために設けられた年のことで、通常の365日の年は平年といいます。
現在は4年に一度のうるう年ですが、江戸時代のうるう年は、旧暦が使われており約3年に一度、一年が13か月になる年がありました。
江戸時代の武士のお給料は年俸制でしたので、一年が12か月の年と比べて、3年に一度やってくる、うるう年の年は13か月になりますからお金のやりくりが大変になります。そのため、うるう年にはお金がかかる家を建てたり、お墓を建てたりすることは控えたほうがよいという教えがありました。
その教えが年月を経た現代でも、うるう年はお墓を建ててはいけない年と、残っているようです。
別の説では、月が重なるうるう年のは悪いことも重なって起きてしまう年。とも言われており、お墓=死として結びついてしまうお墓を建てる行為を、うるう年には行わないほうがよいと考えられていました。
現在のお給料は年払いではなく、月給制である場合がほとんどです。そのため、うるう年の年の収入が平年と同じでも、お墓を建ててしまうことで年間の家計に影響を及ぼすことはほぼありません。ですから、現代はうるう年の年にお墓を建てておくことを過度に心配する必要はありません。
うるう年にお墓を建ててはいけないというのは宗教的なものではなく、江戸時代からの言い伝えですので、うるう年にお墓を建てることを控える必要はありません。近年では、うるう年にお墓を建てるのを避けるという方は減少しています。
ただ、お墓を建てる本人が納得しても、親族や家族の中にはうるう年にお墓を建てることを不安に思う人がいる場合があります。地域によってもうるう年に対して異なる風習があり、東北や西日本の一部の地域ではうるう年にお墓を建てることはよくない。逆に沖縄ではうるう年にお墓を建てることは縁起がよいと言われています。
地域や個人によって風習や考えが異なります。皆が納得できるように、うるう年の年にお墓を建てておきたい場合には、心配している人に言い伝えであることの説明をしたり、寺院や霊園で相談してみることでうるう年にお墓を建てることへの不安が解消されるでしょう。
お墓を建ててはいけない日はあるのか?
お墓を建てる年に、厄年やうるう年も影響はないということがわかりました。次は生前にお墓を建てるうえで、よくカレンダーにも書いてある「仏滅」「大安」などの文字が気になってしまう方もいらっしゃると思います。
これは六曜といいます。
お墓を建ててはいけない日に関係があるのでしょうか?
六曜とは
六曜とは鎌倉時代に中国から伝えられ、一般的に用いられるようになったのは明治時代の太陰暦から太陽暦への暦改正以降で、意外にも新しい習慣です。
厄年と同じく、陰陽道を起源としているという説があり、仏教や神道とも関係がありません。
意味も誤解されている場合が多く、例えば「友引」は「共引き」といい、勝負の決着がつかないという意味でしたが、「友を引く」と思われています。
とはいえ、「結婚式は大安」「お葬式は友引を避ける」といった慣習が現代でも根付いています。
六曜の正しい意味を理解しても、なんとなく気になるという方が多いのが現状です。
気になる場合には、お墓を建ててはいけない年に厄年もうるう年も関係ないように、六曜についても説明をすることが、生前にお墓を建てるご本人、家族が納得できる一助となるでしょう。
六曜は、先勝、友引、先負、仏滅、大安、赤口の順で6日ごとに繰り返され、毎年少しづつ日付が異なります。お墓を建てる時には、年間カレンダーで六曜を確認し上手に利用することがおすすめです。
お墓を生前に建てておくメリット
①自分の希望に合うお墓を選ぶことができる
お墓を生前に建てておくことで、自分の好きなデザインのお墓にしたり、思い入れのある場所にある霊園を選んだりできます。
また、納得できるまで時間をかけることや、自分が埋葬されるお墓を自分の目で確認しておくことができます。
②家族の負担を減らせる
身内の逝去後、悲しみのなかで家族がやることはたくさんあります。年忌法要の準備・各種手続き・遺品整理・相続問題。それに加え、お墓を建てたりするために霊園の選択・お墓の準備も含めると時間的・金銭的・体力的にも負担がかかってしまいます。
お墓を生前に建てておけば、家族はその負担を軽減でき、本人が建てたお墓での供養を親族が納得してスムーズに行うことができます。
③節税対策になる
亡くなった人から一定額以上の財産を相続する場合には、相続税を支払う必要があります。
お墓や仏壇など、ご先祖様を供養する財産は祭祀財産といい、相続税はかかりません。
相続した遺産から遺族がお墓を建てる予定であるならば、生前にお墓を建てておいたほうがお墓は課税対象から外れるので節税対策になります。
相続税についてはこちらを参考にしてください→国税庁 相続税がかからない財産
④家族で話し合う機会になる
お墓を生前に建てておくことで、本人や家族の希望を認識し、不明点を確認したり、話し合っておくことができます。
また、お墓を生前に建てておくことは、死と向き合い家族それぞれが自分の人生を見つめ直す機会にもなります。
お墓を生前に建てておくデメリット
お墓を生前に建てておくことはメリットが多く魅力的ですが、場合によっては次のようなデメリットもあります。
①お墓の生前購入ができない墓地がある
公営墓地では、お墓を生前に建てることが難しい場合があります。近年、お墓を生前に建てておくことが可能である公営墓地もみられるようにはなりましたが、まだまだ少ないのが現状です。
そのため、お墓を生前に建てておきたい場合には民間墓地でのお墓選びが多くなります。
②毎年の年間管理料がかかる場合がある
供養の方法によって、毎年の年間管理料がかかる場合があるため、確認し家族に伝えておくことが必要です。その際には年間管理料の費用も把握しておく必要があります。
また、お墓を生前に建てた後、遺骨が納骨されていなくても毎年の年間管理料がかかる場合があります。
生前に建てておくことができるお墓の種類
生前に建てておくことができるお墓の種類はどのようなものでしょうか。一般的には以下の通りです。
①継承墓
一般的な先祖代々の墓のことで、「家」で継承していき、子どもや孫世代なども使うことができます。毎年の年間管理料を支払う必要があります。
②永代供養の個別墓
10年・30年など契約年数の間は個別のお墓でお墓参りができるようになっています。管理や年忌法要は寺院や霊園が行ってくれますが、契約年数を過ぎると供養塔などへ合祀されます。契約年数の間は毎年の年間管理料が必要となる場合があります。
永代供養墓についてはこちらもご覧ください。
永代供養墓を知ろう! 「永代供養」の意味やさまざまな永代供養墓の特徴をわかりやすく解説
③永代供養の合祀墓
個別のお墓は建てず、大きな供養塔などへ他の人の遺骨と一緒に納められるお墓です。
毎年の年間管理料はない場合が多いです。
④樹木葬
墓石を建てて供養するのではなく樹木を墓標として、その周りに遺骨を埋葬する方法です。個別墓・集合墓・合祀墓の埋葬方法があり、永代供養であることが多いです。
契約年数の間は毎年の年間管理料を支払う場合があります。
樹木葬についてはこちらもご覧ください。
樹木葬の仕組みは?メリットデメリットと後悔しないためのポイント
⑤納骨堂
屋内の施設に、たくさんの骨壺を収容しているお墓です。仏壇のようになった形の専用スペースやロッカーのようなタイプもあります。個別墓・集合墓・合祀墓の埋葬方法があり、永代供養であることが多いです。契約年数の間は毎年の年間管理料を支払う場合があります。
納骨堂についてはこちらもご覧ください。
納骨堂の費用相場はどれぐらい?安くするポイントを5つ解説
お墓を生前に建てておく費用
お墓を生前に建てておく場合の費用と、亡くなった後に建てるお墓の費用に差はありません。
具体的にお墓を建てる費用はどれくらいなのでしょうか。ここでは一般的なお墓を建てるときの費用を紹介しますので参考にしてください。
墓地を購入して、墓石を建てる場合の初期費用相場は総額で約100万円〜350万円です。
墓石代+墓地代(永代使用料)で算定されます。
①墓石代の費用相場
墓石代の費用相場は約60万円〜200万円で、墓石の彫刻や施行工事費用を含んでいます。
②墓地代(永代使用料)の費用相場
墓石代に加え、墓地代(永代使用料)がかかります。費用相場は約35万円〜130万円です。
永代使用料とは、墓地や霊園からお墓を建てる土地を使用する権利を買うための費用です。
毎年支払うものではなく、契約した時だけに支払います。
「墓地を買う」のではなく、「墓地を使用する権利」を買うという意味になり、墓地が不要となった場合には管理者に返還しなければならず、貸し出したり、売ることはできません。
③毎年の年間管理費
初期費用のほかにも、お墓を建てた後にかかる費用があります。
毎年の年間管理費は墓地の維持や管理に必要な費用で、相場は年間約4,000円〜15,000円です。
お墓を生前に建てておく5つの手順
お墓を生前に建てておくためには、どのような流れで進めていけばよいのでしょうか。
5つの手順に分けて説明します。
①どのようなお墓を建てるのか決める
生前に建てることができるお墓はさまざまです。まずはどのような種類のお墓にするのか。誰が入るのかなどを決めます。お墓を建てるには2〜4か月かかります。年内に建てておきたい。厄年の年やうるう年の年を避けたいなど希望がある場合には逆算して進めていきましょう。
②霊園・墓地の情報を集める
お墓を建てたい場所や希望する供養の方法などに合った霊園や墓地の情報を集めます。インターネットなどで検索し、資料を取り寄せます。
一か所だけでなく、いくつか取り寄せて比較検討してみましょう。
③霊園・墓地の見学をする
家族や親族は一年にどれくらいお墓参りをする予定か。年忌法要やお墓参りをしやすい場所か。アクセスはよいか?公共の交通手段は使えるか?車が必要か?
霊園や墓地の敷地内は整備されているか?施設内に階段や坂道はないか?
担当者の対応はよいか?など、チェックポイントを洗い出してから霊園や墓地の見学に行きましょう。トラブル防止のために家族や親族に同行してもらうことも大切です。
④お墓のデザインを決める
お墓を建てたい場所が決まったら、お墓のデザインを決めます。
⑤開眼供養をする
お墓が完成したら、開眼供養を行います。
開眼供養とは、新しいお墓に魂を宿して供養の対象にする儀式のことです。生前に建てた場合には納骨がされていないため、開眼供養をしないことがありますが、死後にスムーズに納骨をするためにはお墓が完成した時に開眼供養を行っておくとよいでしょう。
お墓を生前に建てておく際の注意点
①お墓を生前購入する場合には家族・親族と相談する
自分の希望のお墓を選ぶことができるのは、お墓を生前に建てておくことの魅力ですが、年忌法要やお墓参りをしてくれることになる家族・親族の意見や希望にも耳を傾け、全員が納得できるよう話し合いをしましょう。
②建墓期限を確認する
建墓期限とは、お墓の土地を購入してから墓石を建てるまでの期限のことです。一般的な建墓期限は半年から3年以内であるようです。
建墓期限を過ぎると、墓地の権利を失い、支払ったお金も返還されないという可能性がありますので必ず建墓期限は何年か確認をしておきましょう。
③お墓に納骨していなくてもかかる費用を確認する
お墓を生前に建てた後、納骨していない場合でも毎年の年間管理費などがかかる場合があるため、毎年の年間管理費がいつから発生するか、費用はいくらかかるのかについても確認が必要です。
まとめ
お墓を生前に建てておくことは自分の希望に合わせてお墓を建てられるだけではなく、残された家族の負担も軽減でき、節税対策になるなどメリットがたくさんあります。
さらに、厄年やうるう年の年など、お墓を建ててはいけない年という概念もなく、生前にお墓を建てておくことは、かえって縁起がよいとされているのは魅力的です。
お墓を建ててはいけない年は気にする必要はないですが、地域や個人で厄年やうるう年の年の言い伝えや受け取り方が異なるので、トラブル防止の為に話し合いは必ず行い、皆が納得できるお墓を建ててください。